薄桃色にこんがらがって(終)#51

 気になるなぁと一部読み直すつもりが完走しているのは良くあることですね。
 ということで、今回はちゃんとまとめます。

 あらすじ的には、雑誌のオーディションに挑む甘奈。その雑誌が千雪の好きと憧れ『アプリコット』の復刊であったことから始まるギクシャク。しかもオーディションの結果は甘奈に既に決まっていて……。

桑山千雪
今回のある意味原因。憧れのアプリコットに対する気持ちからいつものお姉さんムーブが不調。
◆甘奈がアプリコットに相応しいと思う気持ち
◆なんでアプリコットを想い続けた自分じゃないんだろうという気持ち
相反する感情で揺れる姿は『少女』のよう。

大崎甘奈
ある意味被害者。283屈指のネガティブメンタル。
アルストロメリアでいることの大事さ故に、踏み込めない。

大崎甜花
名脇役。甘奈の後押しをしたり、千雪さんに寄り添ったり……。メインじゃないのもあるけど一番頼もしい。大概二人に頼りきり故にアルストロメリアの強さも二人の弱さも識っているのかもしれない。


 オープニングでは、オーディションを受ける練習の話。今回のキーワード『反対ごっこ』で甘奈のPRを罵倒?する可愛い二人。このPR、シナリオ読み終えた後に本番用と比べると千雪さんの言葉がなかなか辛辣に聞こえます(笑)。
 1話で『アプリコット』が千雪さんに多大な影響を与えたことが分かります。復刊に伴うイメージ変更やお似合い/羨ましい等、甘奈へ複雑な気持ちを抱く中、Pは出来レース(言い方悪いですが)な状況に悩んでます。後の話し合いでのアプリコット側の言い分、『結果が前か後かの違い▪オーディションそのものがチャンスの場である』を理解はできるけど気持ちは納得が行かない……しかしてひっくり返すことも無い辺りが真っ直ぐさと社会人的な折り合いを表しいるようで好きです。まぁアプリコットさんは内定の連絡を事前に寄越せよ……とも思うのですが。
 2話では、不安定な千雪さんが描かれています。何となくですが、いつもならレッスンの予約を甘奈に受け渡していたような気がします。Pからの「自分を大事に」を言い訳に譲らなかったような(そこまで気が回らなかった)……アプリコットを知らない甘奈がどうして?とか無意識でも自分がオーディションを受けることを決めていたのかもしれません。あと電車でお腹を鳴らした双子は3話の冒頭との対比なのかもしれません。
 3話は、ギクシャクメリアの状況から千雪さんがオーディション参加を決意する話。
 冒頭で甘奈のお腹の音を3人の声でかき消す場面がありますが、2話ではそんなにお腹の音を気にした風な言葉は無いんですよね。ここ、最後に甘奈が悟った『良いときも悪いときも一緒』に繋がってるのではと思います。あとは、ギクシャクメリア状態での3人の気持ち
◆甘→千雪さんは応援してるだけなのに(ほんとはアプリコットを巡る千雪さんの気持ちに勘づいてるけど……踏み込めない/たくない)
◆千→甘奈ちゃんは悪くないのに(気遣わせていることへの負い目/アプリコットへの気持ちはバレてると思ってる)
◆甜→大事な二人に何も出来ない(この時点で甘奈内定は知っている)
 気になるけども、Pへの確認へ踏み込めない甜花。
一方、気持ちの折り合いをつけるために踏み出した千雪さん。そこかしこに千雪さんの強かさと大崎姉妹の弱さが散らばっている感じですね。 
 4話では、千雪さんとはづきさんの夜/Pと甜花の夜。単純な友人であるからこそ、千雪さんは後ろめたい感情もはづきさんに言えたのでしょう。『自分の宝物が甘奈に奪われた感覚』……大事であるが故に、お姉さんの立場であるが故に、大崎姉妹にはさらけ出せないこと。深くつつかないはづきさんからの「頑張れ」「大人じゃないんだってば」と言えるはづきさんは良い大人過ぎますね。 一方、踏み出した千雪さんを受けてかPと話し合う甜花。Pが望むように彼女も、二人には戦うのであれば、同じ土俵で向かいあって欲しいと思ったのでしょう、互いを応援したいが故に。
 5話は甘奈のターン。一番不安定な子の気持ち。
上擦った「もちろんだよ」が示すように、千雪さんと戦いたくない/千雪さんの(アプリコットへの想いを知るからこそ)ほうが相応しい/勝負の先に今までの楽しいアルストロメリアはあるのかとさらけ出してきます。心配なら出なくても良いと肯定できるのは甜花らしい(お姉ちゃん/弱さを識ってる)役目ですね。ただしやるなら『全力』で付け加えます。これに対し『全力だからそこ負けた時か怖い』というのが甘奈の答え。甘奈の魅力が詰まってますね。積み重ねてきた大事なものを失う恐怖。負けばかりを考えている辺り、本当に自分より千雪さんが相応しいと思っているのでしょうね。結果的に幕引きの「辞退します」になる辺りが甘奈……って感じで弱さと優しさが滲んでいます。
 そして6話。其々の想いが聞こえる話。
 辞退を申し出た甘奈、その甘奈の気持ちにまで至らなかった千雪さん。この時点では互いの気持ち/自分の気持ちに『本気』で向き合っていなかったのでしょう。結局は都合の良い『現状=今までのアルストロメリア』に逃げる口実にも聞こえる、互いの辞退宣言。そして告げられるグランプリ内定の話。辞退という逃げ場を失った甘奈、勝利を失った千雪さん。
 そして悩む全てを吐き出すように『反対ごっこ』が始まります。
千→甘奈ちゃんがオーディション落ちれば良いのに。負けたい。
甜→二人とも落ちちゃえ。なーちゃん負けても良いよ。負けたら大事なもの壊れちゃうから。
甘→千雪さんが絶対絶対絶対落ちれば良いのに。負けたい。
 ここら辺からまさに『こんがらがって』きます。どこまでが反対なのか、本心なのか……そも彼女たちにとって二分するように気持ちをほどけたのなら、今回の件はどれほど楽だったでしょうか。千雪さんの反対には甘奈に勝ちたい気持ちは籠ってるでしょうし、甜花は甜花で勝敗の先に嬉しい/悔しいが付きまとう以上、純然たる応援だけでは無いのかもしれません。甘奈もまた敗北への恐怖と千雪さんへの気持ちの相反した言葉には、何で自分がグランプリになってしまったのかという後悔のような気持ちも少なからず感じるような気かします。解釈は其々でしょうが、千雪さんがいうように3任の声は互いに「聞こえた」のです。それにしても、甘奈から気持ちを引き出すために『反対ごっこ』を始める千雪さん、それを受けて、全力勝負(あるいは負け)の先にあるアルストロメリアは壊れないと言い切った甜花のムーブは、正に甘奈のお姉さんって感じですよね。
 そして続く「アルストロメリアなんか大嫌い▪大事じゃない」。甘奈だけが言えずに、千雪さんが繋げる優しい「大嫌い▪一番大事じゃない」。大事であるから壊したくない(=壊れちゃうかもしれない不安)を抱える甘奈と、それを乗り越えた先にいる二人。アルストロメリアの全てがここに詰まっていると思います。本当に大好きな場面です。その後に千雪さんの「戦わせて」に対して甘奈が「やだ、戦いたくない(恐らく本心)」「戦いたい」と負けることへの恐怖を吐露した後に「戦って下さい」と千雪さんへのライバル宣言ができるほどになるあたり、『反対ごっこ』は進むための大事な儀式でした。
 エピローグ。オーディションに賭ける其々の気持ち。自己PRにて、
甘→これまで知らなかったアプリコットと自分を繋げられるのか模索したい。
千→自分の原点(アプリコット)と繋がる今に全力で挑みたい。
のような発言があります。何だか『これまで』と『これから』のアルストロメリア3人を揶揄しているように感じます。
 一方甜花は、『全力勝負』の場をつくるために審査員を招還します。これのおかげで『全力で負けた先にあるアルストロメリア』=甘奈の不安を否定の構図が生まれました。どちらかが負ける未来、されどアルストロメリアは壊れることなく美しく。甜花もPもアルストロメリアの絆と強さを証明したかったのでは無いでしょうか。そして甜花、審査員に席をゆずっているので(恐らく)オーディションの現場……勝敗を直接見てないんですよね。彼女にとって勝敗そのものは些細で、そしてどう転がろうがアルストロメリアの未来を信じているという暗喩なのかもしれません。

 「頑張らなくちゃいけないの」といつか反対にいった言葉を口にする甘奈。悔しくて辛くてその気持ちを大崎姉妹に打ち明けることが出来るようになった千雪さん。互いに遠慮のないされど互いの気持ちを背負って、アルストロメリアは新しい季節を迎えていくのでしょう。


 
 何だか思った以上に長い入力時間と分になってしまいました。早く寝なければ。